仕事が完結しない鎌倉市役所の文化財調査の実態を憂える

  • 2018.05.22 Tuesday
  • 22:36

    鎌倉市役所移転については、本ブログの記述が大きな反響を呼んだ。コメントがたくさん寄せられた。移転するならそれにふさわしい仕事を職員にしてもらいたい、そんな趣旨の声もあった。真面目に仕事をしている職員もいるのだから、不祥事をなくして市民本位の鎌倉市にしてほしい、そんな願いをコメントから感じたのは私ばかりではあるまい。こうした中で、きちんと仕事が完結していない事例が文化財課で発覚した。以下に報告したい。

 

    発掘調査に関する未完成の仕事の実態がそれである。鎌倉市は埋蔵文化財包蔵地が至るところにあり、対象地では開発行為の前に発掘調査が義務づけられている。

 

   この発掘調査の流れを記すと次のとおりとなる。

○現地での調査

○発掘して出てきた埋蔵物の整理、報告書の取りまとめ


   つまり、発掘調査は報告書の刊行をもって完結するのである。規定では、この調査後におおむね3年以内に報告書を刊行することとされている。根拠は国と県の文書にある。


○文化庁は平成16年10月29日付けで「行政目的で行う埋蔵文化財の調査についての標準」と題した文書を出し、「作業の実施時期」の項に、「報告書は発掘作業終了後おおむね3年以内に刊行することを原則とする」と記載している。「刊行」の項にも、「報告書の刊行は、報告書の完成が発掘調査の完了であること、調査成果は可能な限りすみやかに公表する必要があることから、発掘作業終了後おおむね3年以内に行う必要がある」との記載がある。平成16年12月20日付けの次長通達では、「各都道府県において、記録保存の発掘調査の指示等の事務執行における基本的指針として、この標準に準拠して、『基準』を定める必要がある」と記載している。

 

○神奈川県では文化庁の指示を受け、平成19年3月29日に「神奈川県内における国又は県指定史跡等の発掘調査の基準」を定めている。「国又は県指定史跡」としているものの、「定義」の項には「将来史跡を目指す埋蔵文化財包蔵地」も含めるとしており、幅広い範囲の発掘調査を対象とした基準であることがわかる。別途「神奈川県内における開発行為等に伴う埋蔵文化財発掘調査の調査基準」の規定もあり、内容はほぼ一致している。県の標準には「報告書の刊行時期」の項があり、「報告書は、原則として発掘作業終了の翌年度から3年以内に刊行する」との記載がある。

 

    ここからが本題である。鎌倉市では埋蔵包蔵地の発掘調査に関して、事業者の開発行為の場合は費用を事業者負担でさせている。個人宅の場合は鎌倉市の教育委員会による調査となる。その場合の調査費用は文化庁、神奈川県、鎌倉市の三者で折半する形だ。つまり、個人負担はない。

 

    この公費で行う個人宅の開発行為にともなう発掘調査に関して、調査費用は支払われたものの、報告書が未刊行のものが多数あることが判明した。冒頭に書いたように、発掘調査は報告書が提出されて事業が完結したと言える。報告書が未刊行ということは、調査事業がまだ終わっていないことを意味する。今回鎌倉市に情報公開請求して判明した報告書の未刊行の事例は、次のとおり。

 

○平成17年度調査   1件
○平成18年度調査   3件
○平成19年度調査   1件
○平成20年度調査   7件
○平成21年度調査   9件
○平成22年度調査   8件
○平成23年度調査   5件
○平成24年度調査   4件
○平成25年度調査   3件
○平成26年度調査   2件
○平成27年度調査   1件
○平成28年度調査   3件
○平成29年度調査   4件

 

     合計51件の調査に関して報告書が未刊行であることがわかる。これは平成30年4月1日現在の数字である。

 

    古いものでは、平成17年度の調査が報告書未刊行である。これは、大町三丁目1230番4外の名越ヶ谷遺跡を発掘調査したもので、費用は総額32万8000円で、内訳は文化庁負担が16万4000円、神奈川県負担が3万3000円、鎌倉市負担が13万2000円となっている(端数切り上げと切り下げのため合計に若干の差額がある)。
    平成18年度調査では、3件が報告書未刊行である。二階堂字荏柄3番6外の大倉幕府周辺遺跡群、同荏柄76番4の大倉幕府周辺遺跡群、並びに小町一丁目333番2の若宮大路周辺遺跡群がそれである。


     このうち二階堂字荏柄3番6外の大倉幕府周辺遺跡群の場合は、調査費用が総額236万1000円である。内訳は、文化庁負担が118万1000円、神奈川県負担が23万6000円、鎌倉市負担が94万4000円である。これだけ調査に予算をかけ現地を調べたのだから、報告書が未刊行というのは問題ではなかろうか。平成17年度や18年度の調査となれば、当時調べた人たちもばらばらになっている可能性が高い。報告書を今からまとめるのは難しいのではないか。

 

    一件あたりの調査費用の大きいものでいえば、平成22年度の建長寺旧境内遺跡があげられる(22年度から県の指示で詳しい住所は一覧表に掲示しなくてもよいとされたため住所は記載されていないが、建長寺の周囲とのこと)。総額571万7000円の調査費用をかけながら、報告書は未刊行である。内訳は、文化庁負担が285万9000円、神奈川県負担が53万6000円、鎌倉市負担が232万2000円である。

 

    調査費用は教育委員会の調査担当任用職員の賃金や作業員の日当、機材の使用料に用いているそうだが、報告書が未だ提出されていないということは、仕事として完了していないことになるのではなかろうか。

 

   鎌倉市議会でもこの報告書未刊行の件は問題とされた。本年2月22日開催の教育こどもみらい常任委員会で議題になったほか、本会議でも松中健治、長嶋竜弘議員が一般質問している。問題とされたのは、債務負担行為になぜしないのかという点である。


    自治体の会計では、単年度に終わらない事業に関しては、「次年度支出予定いくら」といったふうに全体の支出を記載し、翌年以降の予定を示す形をとっている。何年かにまたがる建設事業などはみなこの形で予定支出を明記している。これが債務負担行為だ。発掘調査の事業は単年度で完結していない。ならば債務負担行為にすべきではないか、というのが何人かの議員の指摘である。

 

    これに対する市側の解答は次のようなものだった。

 

「発掘調査とそれからの報告書の刊行というのは、別の契約を結んでおります。そういったふうに別々の契約で結ぶのであれば、債務負担行為を起こさなくても単年度契約で実施するということで問題ないというふうに考えております」(30年2月22日の教育こどもみらい常任委員会での西山朗文化財担当課長(当時)の答弁より)


    つまり、発掘調査の費用と報告書作成費用は別ものなので債務負担行為に該当しないというのである。これは、報告書作成が遅れているのを養護する発言と受け取れる。債務負担行為ならいつまでという期間が限定されるので、少なくとも平成17年度や18年度の調査が報告書未刊行という事態を避けられたはずである。このままでは、いつまでたっても報告書が出ないという現実を引き継ぐことになりかねない。


    市民としては報告書を見てはじめて、住んでいる鎌倉市内の埋蔵文化財の中味を知ることになるのだから、せっかく調査したのに報告書が未刊行というのは実にもったいない話である。国や県の基準に沿い是非3年後に刊行するように努力してもらいたい、そう思う市民は少なくないのではなかろうか。

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