北鎌倉隧道開削予算差し止め控訴審で市長側が出した苦しい言い訳の書面

  • 2017.12.11 Monday
  • 21:12

    10月5日付けの私のブログで、北鎌倉隧道開削予算差し止め控訴審で裁判所が出した宿題に触れた。その宿題に対する回答の書面が、被控訴人の松尾   崇鎌倉市長側から12月1日付けで送られてきたので、以下に紹介したい。

 

    まず、東京高裁第12民事部の杉原則彦裁判長が、10月4日の第一回口頭弁論の場で出した宿題について、改めておさらいしたい。

 

    鎌倉市長に高裁の裁判長が出した宿題は、次の2点である。


(第1)最高裁は平成25年3月21日付けで第一小法廷が、「地方公共団体の支出命令は、『1、契約が著しく合理性を欠き、看過できない瑕疵が存在する時』ならびに『2、地方公共団体が契約を解消できる特殊な事情がある時』でない限り、違法なものではない」との判決を下している。本件支出(北鎌倉隧道開削工事の支出)が、著しく合理性を欠き、看過できない瑕疵が存在する事例と言えないのか、理由を書面で書いて提出せよ。また、本件支出が特殊な事情がある時に該当しないのか、書面を書いて提出しなさい。


(第2)北鎌倉隧道の開削工事は、文化庁が上の尾根に文化財的価値があると市に伝えて止まったが、鎌倉市長として裁量権を逸脱していないと主張する根拠を書面で提出しなさい。

 


   鎌倉市長側は、(第1)について、次のとおり反論してきた。要旨を「控訴審第1準備書面」から引用しよう。

 

 

○本件工事は、開削工事をする前の準備作業(準備工)であり、(控訴人が)「本件開削工事は、平成28年4月4日着工した」と主張するのは間違いである。前記の本件工事日は、請負業者が、人が現場にみだりに入らないように、「仮囲い」(バリケードの移動)等を設置した日である。本件工事である開削工事に着手(「着工」)したものでは全くない。本件では、「本設工事」である開削工事は、一切行われていない。

 

○控訴人側は、(1)風致地区での工事の事前協議、(2)急傾斜地崩壊危険区域内行為の神奈川県知事の許可、(3)宅地造成規制法の鎌倉市長の許可…… の手続きを経ていない、と主張するが、いずれも手順を踏んでおり、問題ない。ちなみに、本件では、当該許可(同意)を得た行為は一切行われていない。

 

○よって、本件に「法令違反」は全くないのであるから、当時の鎌倉市都市整備部長に注意義務違反はない。


   つまり、被控訴人の鎌倉市長側としては、本件工事は開削工事の前の準備工事であるから、「契約を解除できる特殊な事情」ならびに「重大な瑕疵が存在する時」には該当しない、そう主張しているのである。

 

   また、法令違反に関しても、鎌倉市長側は「手続きをした」と主張しているのである。

 


(控訴人の住民側の反論)
    しかしながら、控訴人側としては、控訴理由書で述べているとおり、「本件開削工事を本件仮設工事に変更する内容の工事請負変更契約書は存在しない」のであり、本設工事(つまり開削工事)として予算を支出したことは間違いない事実である、と反論したい。

 

   さらに、法令違反はないと被控訴人側は主張するが、上記(1)から(3)の手続きを市長側がとったのは、すべて工事着手後であり、市民に指摘されたり神奈川県の調査が入ったりして、許認可の手続きをようやく取り始めた経緯がある。着工前に法令の手続きを踏んでいなかった以上、重大な瑕疵があったと言わざるを得ない。

 

 

(第2)鎌倉市長側の裁量権の逸脱または濫用に関して、鎌倉市長側はこう反論している。前記鎌倉市長側の第1準備書面から引用しよう。


○平成22年3月31日付けの鎌倉市教育委員会による『史跡円覚寺境内・名勝及史跡円覚寺庭園保存計画書』では、(北鎌倉隧道上の)本件尾根は国指定史跡ではない。また、史跡の追加指定については、「今後JR線路敷と馬道(市道)部分の史跡指定の検討を行う」とされ、本件尾根(北鎌倉隧道を含む)は追加指定の検討対象とは全くされていない。


○鎌倉市の文化財専門委員会でも、某委員が「この尾根自体がすでに鉄道開通によって半分以上が損なわれているので、記録に残すことは必要だと思うが、安全対策との兼ね合いだと思う。死守しなければならない史跡ではないというのが私の意見である」「一遍聖絵も当時の姿通りに描いたのかというと、かなり虚構性が入ってくると思う」と発言しているとおり、本件尾根の文化財的価値については、(専門家も)否定的な見解であった。


○隧道(トンネル)自体は「史跡」ではないから、鎌倉市としても、これを保存する場合は、「史跡」とは別の保存理由、保存根拠が必要となる。


○それでも本件尾根を「国指定史跡」に「追加指定」するというならば、事実上、土地所有権者の同意が必要であるが、土地所有権者の同意にはきわめて困難が予想される。


○前述したように、本件尾根は、明らかに、「国指定史跡円覚寺境内」に「追加指定」を検討すべきであるという対象ともなっていない。さらに、「市指定史跡名勝天然記念物」にも指定されていない。「神奈川県文化財保護条例」の規定による指定もされていない。


○つまり、本件尾根の文化財的価値に関して、鎌倉市と文化庁とでは捉え方が著しく相違しているのである。文化庁が尾根を重要だと言ってきたのは、平成28年4月以降であり、それまでは前出の平成22年3月に作成された『史跡円覚寺境内・名勝及史跡円覚寺庭園保存計画書』が唯一の判断資料であった。よって、道路行政上の裁量権の逸脱または濫用はなかったと考える。

 

 

(控訴人の住民側の反論)
   被控訴人側の鎌倉市長が開削工事にあたって、専門機関や公的機関の意見を十分に聴取するなどの措置を執ったとは、全くうかがわれない。検討委員会が最初から開削工事ありきで進められたことは、委員の一人が「『結論ありき』の委員会も多くありますが、これほど明確な委員会はほかになかったように感じています」と証言していることからも明らかである。            また、鎌倉市長側は尾根自体が鉄道開通によってすでに半分以上損なわれている、と主張するが、最近の研究でかつての陸軍省作成の地図を調べることにより、鉄道開通でほとんど尾根が削られいないことが明らかになった。以上から、尾根ならびに下の隧道の文化財的価値をきちんと検証しないで開削工事の予算の支出命令を下したことは、裁量権の明白な逸脱となる。

 

 

    以上、市長側の準備書面をたたき台に、控訴審の審議を検証してみた。なお、控訴人の住民側の反論は、取り急ぎ私が書いてみたものであり、きちんとした反論書はこれから弁護士に作成してもらう予定であることをつけ加えておきたい。


    ちなみに、前出の市長側の書面の提出を正式に裁判所が確認する第2回口頭弁論は、この12月18日午後2時30分から、東京高裁824法廷で開かれる予定である。是非多くの方の傍聴を期待したい。裁判の成り行きに関しては、今後も随時ブログに掲載していくことを約束してペンを置くこととする。

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