中村県議の政務活動費に関して最高裁はどう判断を下すか?!

  • 2018.10.13 Saturday
  • 21:32

   東京・三宅坂にある最高裁判所は、見るからに威圧的であり、権威そのもののような建物です。その最高裁で、生まれて初めて、私は意見陳述する機会を与えられました。この10月12日(金)午後3時から最高裁の第ニ小法廷で、私は5分間意見陳述をしました。

 

    ここで意見陳述したのは何の裁判であったのかを、改めて記してみましょう。

(事件名)
○鎌倉選出の中村省司神奈川県議の「政務活動費不正受給確認請求事件」がそれです。


(事件の概要)
○中村県議は、県から毎月支給される月額53万円(ちなみにこれは全国の地方議会で一番の高額です)の政務活動費(旧政務調査費)に関して、領収書を偽造し、実態のない『県政レポート』の印刷代に使った、と当時所属する会派を介して県の議会局経理課に報告しました。


○何人かから「不正がある」との証言を得た私は、情報公開請求で領収書の写しを入手し、住民監査請求を提起しました。のちに領収書が架空支出を記載したものであるとの確信を抱き、神奈川県知事を相手に「不正受給額の返還請求をしなかったのは違法である、よってそのことの確認を求める」という趣旨の裁判を起こしました。


○不正受給に該当する額は、平成23年7月から25年11月までにまたがり、総額518万8050円になります。


(一審の判断)
○横浜地方裁判所は、平成28年8月3日、「被告神奈川県知事が、(不正を働いた中村県議が当時所属していた)自由民主党神奈川県議会議員団に対し、518万8050円の支払の請求を怠ることが違法であることを確認する」という内容の原告勝訴の判決を言い渡しました。


○『県政レポート』を印刷したとの主張に関して、客観的な裏付けがなく、不自然、不合理であると判決は記しています。


○518万8050円については、「使途基準以外の使途に充てたものと認めるのが相当」、と判決は述べています。


○従って、前記金員は「不当利得(法律上の原因のない利得)として返還すべき義務を負う」、そう判決は断罪しました。

 

(二審の判断)
○東京高等裁判所は、平成29年7月10日、一審判決を不服として控訴した神奈川県知事に対して、「本件控訴を棄却する」との判決を言い渡しました。二審は一審では採用しなかった証人尋問まで行い、この判断を下したのです。

 

○二審は、「領収書は客観的裏付けを欠く架空のもの」「政務活動費(政務調査費)を使途基準以外の使途に充てて支出した(のは明白)」「会派には法律上の原因のない利得が生じており、他方、県には同額の損失が発生している」と断罪しました。

 

(神奈川県知事の上告受理申立て書)
○二審の判決を不服として神奈川県知事は、最高裁判所に上告しました。

 

○この上告の理由は、2つに分かれています。


(1)二審の判断は、憲法に違反するという「上告理由書」。


(2)二審の判断は、法令の解釈に誤りがあるという「上告受理申立て理由書」。

 

○(1)については、最高裁判所第ニ小法廷の菅野博之、鬼丸かおる、山本庸幸、三浦    守 4人の裁判官全員一致の意見で平成30年8月29日に「棄却」されました。「判決に明らかな憲法違反は認められない」との理由です。

 

○(2)に関しては、同日裁判官全員一致の意見で「上告審として受理する」と決まりました。

 


○受理された内容は、二審の判断が、「神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例」(平成20年3月7日改正条例第3号)並びに「神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例」(平成13年3月27日条例第33号)の解釈に誤り(法令違反)があるというものです。


○新旧条例とも、「会派及び議員は、当該年度において交付を受けた政務活動費(政務調査費)の総額から、当該年度において行った政務活動費(政務調査費)による支出の総額を控除して残余がある場合には、当該残額に相当する額を翌年度の5月31日までに返還しなければならない」と規定しています。

 

○上告人の神奈川県知事の言い分は、こうです。
「県が会派に対し不当利得返還請求権を有することになれば、県からの交付額と、会派の支出総額との比較において、残余が存在しないにもかかわらず、会派は県に対し返還義務を負うことになってしまう。」


○要するに、会派の収支が赤字ならば、たとえ不正に使った金員が支出に含まれていても返さなくてもいいはずであり、知事とすれば返還請求をしなかったことが違法であるとは考えない、という主張です。

 


(上告審での被上告人の主張)
○私は、次のように主張しました。


○まず、上告人の神奈川県知事は、領収書の偽造の件に関して争うという視点を放棄した事実を指摘しました。


○つまり、「上告受理申立て理由書」には、518万8050円に関して、実態のない金員であったか否かの判断を仰ぎたいという文言がないのです。神奈川県知事は518万8050円を不当利得であると認め、ただし新旧条例により収支に残余がないので返還請求を行う必要はない、そう主張しているのです。

 

○最高裁判所は、憲法違反と法令違反が原審にあるかどうかの点しか判断しないため、神奈川県知事は領収書が架空であるか、実態のない支出であるか……の点については争いを放棄したのです。


○結果として、中村県議の不正は、一審二審の判断が確定したことになります。


○その上で私は、最高裁判所の法廷でこう主張しました。
「被上告人としては、新旧条例が政務活動費(政務調査費)に残余のない場合は返還しなくてよいとしているのは、実態のある支出に関してであり、不当利得(つまり不正の支出)については、返還の義務を負うと考えます。神奈川県知事が返還請求権を行使しなかったことは違法です。従って、二審の判決は破棄されるべきではなく、維持されるべきです。」

 


    最高裁判所で弁論するのは初めてでした。緊張しましたが広い法廷で、言いたいことをすべて述べられたと思います。たくさんの鎌倉からの仲間が、傍聴してくれたことも励みになりました。

 

○また、法廷では、神奈川県知事が新旧条例の趣旨に関して、「不当利得まで返還するとなれば、『議員の調査研究活動の基盤の充実をはかる』との条例の趣旨に著しく反し、適切な経費の支出を萎縮させてしまう」と主張しているのは、「誠におかしな言い分である」、との考えも述べたことを付け加えておきたいと思います。「政務活動費(政務調査費)の原資は県民の税金であり、不正に使われたものは当然返還の義務を負うべきであり、知事がそれを請求しなかったことは明らかに違法と考えます」、そう声を大にして主張しました。

 

    私の意見陳述のあと、菅野博之裁判長は、「これで結審します」と告げ、判決の言い渡しを、11月16日(金)午後1時30分から第ニ小法廷で行うと述べました。

 

   興味深いのは、上告人も補助参加人の弁護士も、最高裁判所の法廷で裁判官に「何かこの場で主張に付け加えたいことはありませんか」と聞かれた際に、「何もございません」と発言したことです。たぶんこれ以上、上告理由を言えなかったのでしょう。被上告人の私だけが発言して、口頭弁論は終わりました。

 

   最後に、今後予想される判決の形を並べてみたいと思います。私は3パターンあると見ています。

 

(1) 「上告棄却」。
これが一番良いパターンです。つまり一審二審の判断が維持され、不当利得の返還を命じなかった神奈川県知事の行為は違法となります。

 

(2)「原判決を破棄」。
神奈川県の新旧条例がうたう「残余がない時には返還の義務はない」、との趣旨を不当利得に関しても認めたことになります。この判決の場合、「東京高等裁判所に差し戻す」との判断が出る可能性もあります。


(3)「但し書きを付けて原判決を破棄」。
原判決は破棄されますが「但し518万8050円は実態のない不当利得である」と最高裁判所も架空の支出であった事実を認める判断を、判決文の中に記載した形。これならば、神奈川県知事が返還請求権を行使しなかったことについて違法にはなりませんが、中村県議の違法支出を最高裁判所でも追認したことになります。

 

   上告人は、杉並区議会議員の政務活動費(政務調査費)をめぐる裁判で、事務所家賃に流用した金員に関して、東京高等裁判所が、「(不正として)取り消された部分の金額を返還させるものとする取扱いをすれば」「政務調査費制度の目的に反する面があり」「 (全額を返還させるものとする)取扱いをしないことを違法と解すべき特段の事情を認めるに足りる証拠はない」との判決を、平成27年9月17日に下しています。神奈川県知事は、その事実を前出の「上告受理申立て理由書」に記載しています。つまり、中村県議の判決とは真っ向から異なる判決を、同じ東京高等裁判所が下している事実があるというのです。本件に関して最高裁判所の判例は、まだありません。会派並びに議員の収支報告書が赤字で、残余がない場合、不当利得分があっても返還しなくてよいのかどうか、最高裁判所の判断を、目を皿のようにして熱く見守りたいと思います。

 

書類

 

集合

 

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>

フリースペース


岩田かおる

コメントについて

投稿はできる限りそのまま掲載しています。内容はブログ主宰者が判断しますが、誹謗中傷はないようお願いいたします。

selected entries

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM