市長の裁量権が問われている市庁舎移転業務委託の行方

  • 2019.11.11 Monday
  • 12:55

本庁舎の移転問題に関して


松尾崇・鎌倉市長に対する


2つの損害賠償請求訴訟が


市民から提起されています。

 



   1つは、「鎌倉市本庁舎等整備基本構想策定支援業務委託費用」として、株式会社都市環境研究所に令和元年(2019年)8月23日に鎌倉市会計課が支払った1499万400円に関して、松尾崇鎌倉市長に返還を求める裁判です。


   もう1つは、「平成30年度村岡・深沢地区まちづくり実現化方策検討調査業務委託費用」として、昭和株式会社に平成30年(2018年)5月18日に鎌倉市会計課が支払った2157万5000円に関して、松尾崇鎌倉市長に返還を求める裁判です。


   このうち、前記の「鎌倉市本庁舎等整備基本構想策定支援業務委託費用」の返還を求める裁判は、この11月12日(火)午後2時30分から第1回弁論準備が横浜地裁704法廷で開かれます。


    同裁判は、鎌倉市民の新谷直人さんが原告となり、平成31年(2019年)1月11日に提起されたものです。途中から私が補助参加人として加わり、4回の弁論が開かれてきました。最初は業務委託費用の支払いを差し止める趣旨の裁判でしたが、途中で鎌倉市会計課から支払いが行われてしまったため、訴えの趣旨を変更し、市長に対し支払った金員の返還を求める請求に内容を変えました。そうした経過を受け、争点整理のため、改めて弁論準備が裁判所を介してなされているものです。


以下に裁判でこれまで問われている争点を並べて見ます。これは双方の準備書面を介して主張されてきた内容です。


〇本庁舎移転をめぐる問題点


^榲樟茲涼枠廚軟弱であることについて


   原告側は、「深沢地域整備事業用地は軟弱地盤であり、液状化の可能性が高い」と主張しています。

   これに対して、被告側は、「地盤が軟弱であるとの指摘は根拠がない」と反論しています。


洪水の危険性について


  原告側は、「平成30年1月に神奈川県が告示した『境川水系洪水浸水想定区域図』で、深沢地域整備事業用地が0.5〜5.0メートル浸水するとされており、このような場所に公共施設を移転しようとする計画は違法だ」と主張しています。


  これに対して、被告側は、「最大規模の降雨(24時間積算雨量632mm)で浸水が予想されているものであり、計画規模の降雨(24時間積算雨量302mm)での浸水は想定されていないので、計画策定が違法となるものではない」と反論しています。


E攵躅染について


   原告側は、「深沢地域整備事業用地では、六価クロム化合物、水銀及びその化合物、フッ素及びその化合物、鉛及びその化合物による土壌汚染が判明しており、現地には体育館が建っている場所もあり、完全に汚染処理が完了していないため、公共施設を移転するのは危険である」と主張しています。


  これについて、被告側は、「土壌汚染問題は、現段階では解消されており、根拠はない」と反論しています。


せ毀厩膂佞ないことについて


    原告側は、「本庁舎等整備事業は市民合意がないまま一方的に進められている」と主張しています。

 

   これに関して、被告側は、「広報誌等で告知しているほか、無作為抽出の市民による対話集会も開いており、市民との合意形成に努めてきた」と反論しています。


サ腸餬攣襪膿覆瓩討たことについて


  原告側は、「本庁舎等整備事業は何ら議会の議決も行わない中で、一方的に市長部局が進めており、議決軽視もはなはだしい」と主張しています。


    この主張について、被告側は、「全員協議会の場で報告を行っているほか、総務常任委員会の席で議論がなされており、さらに本庁舎移転を問う住宅投票条例案に関しても議案が議会で審議されており、議会軽視ではない」と反論しています。


〇市長の裁量権の問題点


  裁判で一番問われているのは、市長の裁量権をどう考えるかという視点です。以下詳しく検証してみたいと思います。


🔘裁量権の定義

 

 「裁量権」とは、裁量処分を行う行政庁の権限を言います。「裁量」とは、その人の考えによって判断し、処理することを指します。「行政裁量」は、行政行為をするにあたり、根拠法令の解釈適用につき行政庁に許された判断の余地を指します。また、「裁量処分」は、処分庁の政策的・行政的判断に委ねられた処分を意味します。昭和37年に策定された「行政事件訴訟法」に、この「裁量権」に触れた条文があります。


「・第30条  行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。」


🔘濫用はどこで問えるか?


   処分庁の処分は、基本的に政策的・行政的判断に委ねられたものであり、自由とされています。ただし、裁量権を濫用・逸脱した場合にのみ、司法の判断で取り消されるとしているのです。


a、本庁舎移転の基本構想策定支援業務委託が裁量権の逸脱になるかどうか


   原告側は、地方自治法第4条に定めた地方自治体の位置を定める条例の決議がない中で、本庁舎等整備基本構想策定支援業務委託費用を支出した市長の行為は、裁量権の逸脱以外の何ものでもない、そう主張しています。


    地方自治第4条第1項は、「地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない」と規定しています。
 

   同法第4条3項は、「第1項の条例を制定し又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において出席議員の3分の2以上の者の同意がなければならない」と定めています。


   現状では鎌倉市議会において、本庁舎を深沢地域整備事業用地に移転することに関して、3分の2以上の議員の賛同を得ることはほぼ不可能と言えます。そのため市長は、地方自治法に定めた特別議決を経ずに、基本構想策定支援業務委託費用を支出したのです。


現地はまだ都市計画決定を経ていないので番地もなく、市役所の位置を定める条例の決議は出来ないという意見を主張する議員が一方にいることも確かです。しかし、これは間違っています。私が情報公開請求して入手した「平成26年度深沢地域整備事業用地(A用地・C用地)土壌汚染状況調査業務委託報告書」(平成27年3月作成)には、現地の地番がちゃんと明記されているのです。本庁舎移転先のA用地は、「鎌倉市寺分字藤塚463番1ほか15筆(地番)」と記載されています。ならば条例決議は出来るはずです。私たちは、これを行政の不作為ととらえています。


    原告側は、この点について裁量権の逸脱だと主張しているのです。


b、裁量権の逸脱ではないとの被告側の主張


   被告側は、本件業務委託は、あくまで市の政策の補助業務にすぎず、違法ではないと主張しています。

   さらに、「原告側は本件業務委託契約の締結について議会の議決が必要であるかのように主張しているが、そのような手続きを定めた法令はなく、失当である」とも主張しています。


   しかも、本件業務委託費用に関しては、「予算の承認の議決を経ているのであるから、議会の議論を経たものと評価されるはずである」とも主張しています。


c、最高裁の判例


  最高裁は平成25年3月21日に第1小法廷の判決として、次のような場合に契約が違法になると違法性の概念を認定しています。


「・ 私法上無効な契約であるかどうかは、
(ア)当該普通地方公共団体において取消権や解除権を有しているとき
(イ)当該契約が著しく合理性を欠き、そのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し、かつ、当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真摯に行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような、客観的に見て当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるとき
   に限られる。」


   この最高裁の判断は、平成17年1月18日第2小法廷、並びに平成21年12月17日第1小法廷でも同様の内容のものを下しています。


   つまり、ー莨淡△箍鮟権があるかどうか、看過し得ない瑕疵があるかどうか……の2点が違法性の根拠とされているのです。


d、原告側の主張


  被告側も本件業務委託契約書には、発注者の解除権の定めがあることを認めています。

   となると、本件業務委託に重大な瑕疵があるかどうかが問題となります。


   被告側は、「平成30年3月に策定された『鎌倉市公的不動産利活用推進方針』に準拠して、公共施設の整備に向けた基本構想を定めるため、本件業務委託を締結したものであり、そこには市民等の権利等を制限する内容は予定されておらず、重大な瑕疵が存在するとは考えられない。よって裁量権の逸脱とは言えない」と主張しています。


   しかしながら、「鎌倉市公的不動産利活用推進方針」には、鎌倉市の公的不動産を再編し、本庁舎に集約すると明記しています。つまり地域にある図書館や生涯学習センターなどの施設を廃止・統合し、新たに建設する本庁舎に集約するとの方針が記載されており、市民の権利を制限することにつながるのは間違いない事実であると考えます。


前記したように地方自治法に定める市役所の位置を定める条例の制定もない中で、基本構想策定支援業務委託に税金を支出した行為は、市民の権利を剥奪することを含めて、重大な瑕疵であるととらえ、原告側は市長に損害賠償を請求したものです。


   裁判所が以上のような原告、被告双方の主張をどうとらえるのか、今後の成り行きに注目したいと考えています。

 

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