東京高裁も政務活動費を違法と認定

  • 2017.07.13 Thursday
  • 20:37

    中村省司神奈川県議の総額518万8050円にのぼる政務活動費について、東京高裁はこの7月10日「違法な支出」と認める画期的な判決を言い渡した(判決文全文は添付ファイルを参照)。

    ここで裁判の経緯をしるそう。


(民事事件の経緯)

○鎌倉市民の岩田薫が、情報公開請求で写しを入手した中村県議の『県政レポート』印刷代金の領収書がおかしいとして、平成27年3月4日ならびに16日に、神奈川県監査委員に「知事が返還を求めるべき」とする住民監査請求を提起。


○おかしいとしたのは、平成23年7月〜25年11月までの『県政レポート』印刷代金518万8050円。


○県監査委員は、平成27年4月30日、「印刷代金に関して印刷代金を裏付ける伝票、帳簿、納品書等が一切なく、各支出について客観的に判断するための資料が乏しく、支出の有無を踏まえた判断はできない」としながらも、「政務活動費を支給した自民党神奈川県議会議員団の会派の平成23年度〜25年度の各支出は収入合計額を上回っているから、返還すべき金員はない」と監査請求を棄却した。

 

○岩田薫は「不当利得(法律上の原因のない利得)は返還すべきである」として、平成27年6月1日、横浜地裁に訴えを提起した。

 


(刑事事件の経緯)

○これとは別に、岩田薫は中村県議が『県政レポート』印刷代金にホームページ作成費名目の金員も加えて総額995万805円を県知事から詐取したとして、平成27年3月から何度かに分けて横浜地検に刑事告発した。容疑は詐欺罪と領収書の有印私文書偽造罪の二つ。こちらは平成28年11月2日、詐欺罪に関しては「相手が知事ではなく自由民主党会派なので、罪とならず」、有印私文書偽造罪に関しては「嫌疑不十分」として不起訴処分が下った。

 

○岩田薫は不起訴処分は納得できないとして、横浜第1検察審査会に「不起訴不当」の申し立てを平成28年12月7日に行った。


○さらに横浜地検に詐取した相手を「県知事」から「自民党神奈川県議会議員団」に変更した新たな告発状を、29年4月7日に再提出。こちらは同年4月27日に受理された。

 

 

(再び民事事件の経緯)

○横浜地裁は先の岩田薫の訴えに関して、28年8月3日、「被告(神奈川県知事)が、自由民主党神奈川県議会議員団に対し、518万8050円の支払の請求を怠ることが違法である」との原告勝訴の判決を言い渡した。

 

(一審の判断)

○「中村議員からは、県政レポートの印刷を裏付ける資料は新たに提出されず、また、石井印刷(印刷したとされる会社)からも、やはり、印刷及び印刷代金の受領を裏付ける資料は提出されなかった」「その説明には客観的な裏付けがなく、不自然、不合理であるといわざるを得ない」


○「本件各支出に相当する額については、交付を受けた政務活動費等を、使途基準以外の使途に充てて違法に支出したというべきであるから、県に対して当該額を不当利得として返還すべき義務を負うと解するのが相当である」


○「被告は、平成23年度ないし25年度の本件会派の政務活動費全体の経費は、本件各支出の相当額を控除しても、なお、当該各年度に県から交付された政務活動費等の総額を上回っているのであるから(中略)本件会派として県に返還義務を負う金員はない旨主張する」「しかし、(中略)会派が、交付を受けた政務活動費等を、使途基準以外の使途に充てた場合には、政務活動費等を違法に支出したものとして、県に対して当該支出に相当する額を不当利得として返還すべき義務を負う」

 

○「したがって、県は本件会派に対して、本件各支出に相当する額である518万8050円について不当利得返還請求権を有するものであるから、被告が本件会派に対して上記不当利得返還請求権の行使を怠る事実は違法というべきである」(以上判決文)

 

 

(控訴の経緯)

○被告神奈川県知事は一審判決を不服として、28年8月16日東京高裁に控訴した。控訴審から中村県議も補助参加人として裁判に加わった。

 

○東京高裁の河野清孝裁判官は、第2回口頭弁論の場で「本件の判断に印刷が事実がどうか確認する必要がある。最高裁は実質的審理をしないので高裁が最後の審理の場になる。一審で採用しなかった証人尋問をしてはどうか」と提案。二審の場で証人尋問が行われる運びとなった。


○29年5月10日に被控訴人の岩田薫が申請した3人の証人の尋問が行われる運びとなった。証人は、中澤克之元秘書(当時鎌倉市議会議長)、石井印刷石井照彦社長、森功一元秘書(のち鎌倉市議)の3人。

 

○この証人尋問を受けて29年7月10日に判決が言い渡される運びとなった次第である。

 

 

(二審の判断)

○「本件印刷代につき、納品書、請求書及び領収証の控えがなく、印刷及び印刷代金の受領を裏付ける資料が存在しなかったことが認められることに照らすと、上記県政レポートの印刷代の領収証は、その作成経過が不自然、不合理である」

 

○「県政レポートの印刷代の領収証は、客観的裏付けを欠く架空のものであるので、これを全面的に採用することはできない」

 

○「結局、(中略)原判決説示のとおり、本件印刷がされたことを前提とする本件各支出の事実はなかったものと認めるのが相当である。その他、控訴人及び補助参加人の主張に鑑み、当審において追加提出された証拠を含めて、本件訴訟記録を精査しても、上記認定判断を左右するに足りる的確な主張立証はないというべきである」


○「なお、証拠によると、本件各支出に関する被控訴人作成の平成27年3月3日付け告発状に基づく告発に対して、横浜地方検察庁は、平成28年11月2日、中村議員の有印私文書偽造、詐欺被疑事件につき、嫌疑不十分で不起訴処分としていることが認められる。しかし、当該処分は刑事手続きであって、事柄の性質上、本件訴訟の事実認定に直接影響を与えるものではないというべきである」


○「証拠によれば、石井印刷は、本件各支出に係る本件印刷代について、これを同社の収入とすることを前提に、平成28年3月11日及び4月20日に、平成22年9月1日から(中略)26年8月31日までの事業年度の法人税等についての各修正申告を行ったことが認められる。しかし、本件監査請求の時点では、印刷及び印刷代金の受領を裏付ける資料の提出がないだけでなく、上記修正申告はされておらず、本件訴訟提起の後に初めて修正申告がされているものであって、修正申告に至った理由についての当審石井証言はそれ自体合理性のあるものということはできない」

 

○「そして、当審石井証言はそれ自体信用性の乏しい点があるのみならず、当審における中澤克之の証言と比較すると、当審石井証言を直ちに採用することはできない」


○「なお、当審における証人森功一の証言内容は、それ自体曖昧な点が存することは否定することができないので、本件印刷に係る事実認定に直接影響を与えるものではない」

 

○「そうすると、石井印刷が修正申告をした事実はあるものの、本件印刷が実際に行われていたことを裏付ける的確な証拠はないというべきである」

 


(不当利得については会派の収支が赤字であっても返還すべきとする根拠)

○「以上によれば、(政務活動費を規定した神奈川県の)本件新旧条例等が、使途基準以外の使途に充てた金額が自己負担額を下回る場合には、架空の領収証を用いるなどして政務活動費等として金員を取得したようなときであっても、政務活動費等を使途基準以外の使途に充てたとは認められず返還の問題が発生しないという趣旨のものとは到底解されないところであって、これを左右するに足りるような特段の事情を認めるに足りる証拠はない」


○「そうすると、本件においては、実体と合致しない虚偽の内容の領収証をもって、政務活動費等として金員を取得しようとしたものというべく、本件会派においては、実体と合致しない本件各支出については政務活動費等を取得する法律上の原因がないというべきであって、本件各支出分は不当利得として返還されるべきである」


○「以上の次第で、県は、本件会派に対し、上記518万8050円の不当利得返還請求権を有するものと認められるから、控訴人が本件各会派に対して、当該請求権の行使を怠る事実は違法というべきである」(二審判決文・全文は添付ファイル参照)

 

    これが今回、東京高裁から画期的な判決が出るに至ったまでの経緯である。

 


   新聞各紙は判決を大きく報じた。会派で収支が赤字でも不当利得分は返還すべきだとの判決は、横浜地裁が全国初の判断だったが、今度は高裁レベルでも初の判断となった。地元神奈川新聞は社会面トップという扱いだった。


     神奈川新聞の取材に、全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は、仮に不正があっても自己負担分で補う付け回しの構造を「総額主義」と表現し、「不正支出の温床になっている」と批判。「付け回しを許さないとした点で判決は大きな意味がある」と評価している(神奈川新聞29年7月11日付け朝刊)。かながわ市民オンブズマンの代表幹事の一人は、この「総額主義」をくつがえしたとの新海弁護士のコメントについて、「判決に普遍性をもたせたよいものでした」と評価している。これまで自主的に政務活動費を返還した例や、会派では赤字でないため裁判所が返還命令を出したケースはたくさんあった。しかし、赤字であっても不当利得分は返還すべきだと踏み込んだ判決は、 横浜地裁、東京高裁が全国に先駆けて出したものと評価してよい。新海弁護士のコメントは、この点を指摘しているのである。

 

    一方、中村省司県議は神奈川新聞の取材に、「納得がいかない。身の潔白を証明したい」とのコメントを寄せている。


    本人は全く反省がないどころか、今に至るも裁判所が間違っていると主張しているのである。


    朝日新聞はこの7月12日付けの夕刊紙面で、総額545万円のチラシ配布代金名目の政務活動費について架空だったとして、領収証の偽造を認めた埼玉県議の沢田力(つとむ)氏が、12日に辞職した、と報じている。


    わが神奈川県議とはえらい違いがある、そう怒る県民は少なくないはずだ。神奈川県議の報酬はかなり高い。毎月の給与は92万円で、年収は1665万円に達する。これと別に毎月16日に会派を介して53万円の政務活動費が各議員に振り込まれる仕組みだ。東京都議が減額したので、これは全国一の高額である。政務活動費は、1年を通して残金があれば返還する形になっているが、神奈川県議会議員全体の返金率は28年度で0.93パーセントという低さだ。


    私は今回の判決後の記者会見で、記者の質問に答え、政務活動費の不正をなくす案として以下の三点を提案した。


(1)市民がチェックしやすくするため、情報公開請求しないと開示されない領収証などの添付書類をすべて請求がなくてもインターネット上などで公開する。


(2)自動的に毎月53万円が振り込まれる仕組みを改め、請求してから必要経費を支払う形に改める。


(3)会派ごとの収支を県に提出する形では、会派全体で議員の自己負担分の総額が不正額を上回れば返金しなくていい仕組みになっているので、これを改め、議員個人個人の支給に変え、他の議員の付け回しはできない制度にする。

 


    私としては、鎌倉の政界浄化に今後も全力を尽くす考えでいる。いずれにしても今回の判決を受けて、神奈川県議会が政務活動費の改革にどう乗り出すか、目を皿のようにして見守りたい。

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