高田博厚展(没後30年記念)を介して見えた鎌倉市の文化行政のおそまつさ

  • 2018.01.29 Monday
  • 21:13

    鎌倉芸術館ギャラリーで、この1月24日から30日まで「高田博厚展(没後30年記念)」が開かれた。27日にギャラリートーク(展示解説)が行われるというので、私も参加することにした。鎌倉市の職員が解説するのかと思ったら違った。芸術館は指定管理制度になっていて民間に委託しているので学芸員はいないのだという。代わりに立ったのは、福井市美術館の学芸員の女性だった。福井県は高田の父親の出身地だった縁で、博厚は2歳から18歳までを福井市で生活した。そのことから市の美術館を開館するに際して、高田博厚の作品を常設展示しているという。当日の会場には、高田博厚の彫刻を区画整理した駅前道路に32体常設展示している東松山市の教育委員会の職員も見え、熱心に話に耳を傾けていた。今回芸術館に展示されたのは、ロマン・ロラン像や高村光太郎像、ジャン・コクトー像など高田博厚の作品が37体。他に高田が所蔵するジョルジュ・ルオーの絵画やロダンの彫刻など28点も展示された。福井市美術館の学芸員は、一つ一つ丁寧に素材や作品が造られた背景等について約30人の参観者に解説してくれた。

 

   高田博厚が1966年(昭和41年)から87年(昭和62年)に亡くなるまで稲村ヶ崎にアトリエを構え、その晩年を過ごした鎌倉の市民として、恥ずかしい思いにかられたのは私ばかりではあるまい。それというのも、芸術館ギャラリーでの展示はわずか1週間で終わる短いものだったからだ。鎌倉市には高田の作品が204点、所蔵作品が104点合わせて300点を越える素晴らしい芸術作品が寄贈されている。にもかかわらず、ふだんはこれらの作品は市民の眼に触れることなく、東京の三井倉庫に置かれたまま放置されている。そのことについては、前に本ブログに書いたとおり。芸術館での「高田博厚展」のパンフレットには、「これまで鎌倉市は、『高田博厚展    生誕90年』(1990年(平成2年)、中央公民館ギャラリーにて)、『高田博厚彫刻展2003』(2003年(平成15年)旧華頂宮邸にて)、『高田博厚展ー没後20年を記念してー』(2007年(平成19年)生涯学習センターにて)、『鎌倉ゆかりの彫刻家   高田博厚展ー没後25年を記念してー』(2012年(平成24年)鎌倉芸術館ギャラリーにて)等の作品展を開催してまいりました」との記載があるが、時期ごとの展示はあっても常設展示をしてこなかったことは間違いない事実である。

 

   ショックだったのは、昨年12月3日付けの新聞記事だ。朝日新聞や時事通信が「彫刻家・高田博厚氏    鎌倉のアトリエ閉鎖」との見出しのもと、「文豪ロラン・ロランや詩人ジャン・コクトーらと親交があり、晩年は鎌倉市のアトリエで制作活動をした世界的彫刻家・高田博厚(1900〜87)のアトリエが閉鎖され、知人らが集まって2日、お別れ会が開かれた。遺品は交流のあった東松山市に寄贈される」と報じたのだ。東松山市に寄贈されることになったのは、彫刻や絵画などの作品のほか、書物や家具など数千点だという。

 

    私の頭をよぎったのは、遺族が鎌倉市を見限ったとの思いに他ならない。これまで300点を越える寄贈がありながら、今回のアトリエ閉鎖では鎌倉市ではなく東松山市に数千点が寄贈されたという事実は重い。東松山市は元教育長の田口弘氏が高田博厚と親交があり、氏の作品に惚れ込んで購入してきたという経緯がある。それに対し、鎌倉市は一回もこれまで予算措置を講じることなく、無償で高田作品を手に入れたばかりか、常設展示さえしてこなかったのだ。伝え聞くところでは、稲村ヶ崎のアトリエも本来は鎌倉市に寄贈し、高田記念館として残したいというのが遺族の願いだったという。ところが市の関心が薄く、アトリエ寄贈はあきらめたらしい、そんな話が飛び交っている。鎌倉市民としては残念でならない。

 

    いかにわが鎌倉市が文化行政に予算を講じていないか、以下に2つの市のデータを並べて検証してみたい。

 


○福井市のケース


    1997年(平成9年)福井市美術館を開設。同美術館は黒川紀章氏の設計。建造費は55億円。これは、人口27万人の福井市の年間予算1084億円(一般会計)の約5%に相当する。ここに高田博厚作品を常設展示。彫刻60点とデッサン10点を4つの展示室に分けて展示している。市は美術館の運営費に年間1億4000万円の予算を毎年支出している。

 


○東松山市のケース

 

    区画整理事業のシンボルにしようと、高田博厚作品を高坂駅前道路に約1キロにわたって32体を街頭に常設展示。1986年(昭和61年)に2体、87年(昭和62年)に14体、89年(平成元年)に11体、94年(平成6年)に5体……と何年かにわたって購入したが、購入予算は総額1億3500万円になるという。人口9万人で年間予算が296億円(一般会計)の同市にとって、決して軽い額ではない。

 


○鎌倉市の予算
   

 鎌倉市の人口は17万人。年間予算は598億円(一般会計)である。ちなみに高田博厚作品ほか有島生馬作品など、寄贈された美術品の三井倉庫への保管料は年間213万円とのこと。

 


高田博厚作品を常設展示する予算が鎌倉市には十分ある、そう考える市民は私ばかりではあるまい。300点を越える寄贈品がありながらなんとも残念でならない。

コメント
高田さんの作品は鎌倉の宝だと思います。常設展示することなく、倉庫に眠ったままにしている市の姿勢には、疑問を感じます。残念です。
  • 美術大好き鎌倉人間
  • 2018/01/30 8:41 AM
北大路魯山人しかり、平山郁夫しかり、川端康成しかり、鎌倉ゆかりの文化人の作品や所蔵品を市がきちんと保存し公開する姿勢を示せば、さらに遺族や関係者から寄贈が増えたのにと思うと、残念でなりません。
  • 鎌倉の文化都市複権を目指す市民
  • 2018/01/30 8:55 AM
福井市美術館は開設に際して、高田博厚の全作品(彫刻175点)の寄贈を受けたとのこと。美術館を造る費用は市が負担したが作品購入費までは負担しなくてすんだという。市の熱心な姿勢が理解されたものと思われる。今回、鎌倉のアトリエ閉鎖に合わせて、新たにデッサンと18歳の時に高田が描いた自画像も寄贈されることになったとか。うらやましい限りである。公開の際には是非福井市を訪ねて眼にしたい。
  • 岩田薫
  • 2018/01/30 5:17 PM



【拡散希望】2018/2/7(鎌倉市議会)長嶋議員一般質問(ごみ問題)また先送り
◆鎌倉市政に異論反論オブジェクションVOL.2
〇堋紅言によりて迷走するごみ問題
・新焼却施設、広域処理・自区外処理、ごみ問題過去の経過

(中継録画約13分)https://youtu.be/A0U1qGQH4lg

【拡散希望】2018/2/7(鎌倉市議会)長嶋議員一般質問(村岡新駅問題等)
◆鎌倉市政に異論反論オブジェクションVOL.2
じ鯆明策、都市整備について
4-1村岡新駅と深沢地区整備
・新駅の必要性と問題点、道路整備について

(中継録画約30分)https://youtu.be/LYO9MTu4zvE


  • 湘南一人オンブズマン
  • 2018/02/08 5:26 AM
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