幕府跡のマンション計画で問われる鎌倉市の文化財保護政策

  • 2018.04.16 Monday
  • 20:49

   鎌倉市雪ノ下3丁目の清泉小学校とその周りは、かつて大倉幕府があった場所として知られている。源頼朝はここに1180年(冶承4年)10月、邸宅を構え、自らの執政を執り行う幕府を館に開いたのである。公文所や問注所など政務を行う機能がここに置かれ、まさに鎌倉のまつりごとの中心となったのである。


    その大倉幕府跡地にいまマンション建設計画が持ち上がり、地元は大揺れだ。計画しているのは大手不動産会社の東急不動産。清泉小学校の西側にある1951平方メートルの土地に、地上4階地下1階建て延床面積4630平方メートル、戸数33戸のマンションを建てる計画だ。現地は通称桜道の北側に位置し、長く駐車場に使われてきた。

 

    昨年12月市議会に「鎌倉幕府跡(桜道西側)のマンション建設認可を見直しして頂きたい旨の陳情書」が近隣住民から出された。市議会はこれを継続審議とした。12月15日に開催された建設常任委員会の速記録を読むと、松中健治市議がかなり踏み込んだ建設反対(つまり陳情の採択に賛成の趣旨)の意見を述べたことがわかる。以下引用しよう。

 

「松中委員    かつて清泉の(東)のほうに出たところに4階建てのマンションができて、あれは猛烈な反対運動があったんですけれども、押し切られて建設されたんですけれども、建設途中に世界遺産の(国際審査機関のイコモスの)調査が入って、中国人ですけれども、その調査官、一体あれは何だと、それでそこの調査のときに、中国語で抗議文をユネスコ本部に送っていた我々の仲間がいるんですけれども、それで、あそこで車をおりて、ここは一体何だと、そういうことで、要するに鎌倉の世界遺産の認定というのは最下位なんです。最下位というのは、認定されていない、つまり鎌倉市民にその努力がないと、ああいうところで、あの周辺一帯が大倉幕府の関連の土地であるということがわかっているわけなんですけれども、それで、否定されたと。(中略)
    そういった中で、こういう計画が(再び)この地に出てくること自体が、私としては、非常にある意味怒りをもっているんです。もう世界遺産が否定されたときは、鎌倉、世界遺産で踊っているんですよ。一番踊ったのが市長なんです。和服を着てユネスコ本部まで行ってそれで認めてもらうと、そんなことで踊っていて、裏で要するにあの地に4階建てのマンション計画を。それで調査のときにまだ建設中だったんです。それでその調査官がこれは一体何だと、そういう要するに鎌倉市民としての努力というのが本当にないんですよ。あきれたんだと思います。それで、その世界遺産のランクは最下位です。
(中略)
    本来なら、これは要するに市みずからがその条例とか、そういうのを変えても、だから学習してないんですよ、市は。
(中略)
    そこに重要な箇所にこういうことが経過するというのは僕は、怒りをもっているんです。
    私自身、あそこの道路もああいう形の、(桜道としてレンガを重ねて整備を)やったし、漫画家の二階堂さんにも(イラストを描いて)もらって、武家の(古都)の象徴を、そういうことで、あの辺は努力して、そういうふうにしてきたんだけれども、また出てきたのかと。(中略)清泉も3階建てですよ。それから(横浜国大)附属も3階建てですよ。(中略)桜並木のかいわい、あの辺は完全に大倉幕府の跡地のかいわいであるということが誰でもわかっているわけですよ、あの先にちゃんと石碑もたっているし、清泉の角に。そういう意味でも本当なら(陳情の趣旨に賛成して)採択したい」(12月15日市議会建設常任委員会速記録より、原文のまま)


    陳情を出した市民は「歴史的遺産と共生する街づくりとの矛盾」を指摘し、「再度世界遺産の登録をめざす鎌倉市との方針とも相容れないと考えざるを得ない」と訴えたが、前記したように継続扱いで終わった。

 

    現在、東急不動産によるマンション計画は、まちづくり条例の手続きが完了し、開発手続条例の各課協議が市役所内で行われているところだ。まちづくり条例の方は、中規模開発だとして、学識者からなるまちづくり審議会の審議には付さないで手続きを完了した。また、市民が参加できる公聴会の開催についても対象にはならない面積だとしてはねられた。現地では、埋蔵文化財の包蔵地としての発掘調査の試掘が終わり、これから本格的調査に入る段取りだ。


    文化財を監督する神奈川県では「きちんと調査するように」との意見を先に事業者に出したが、鎌倉の場合、発掘調査で重要な文化財が出ても、記録に残せば、出土品を保管する手続きののちは掘った土を埋め戻して開発を進めてもよいという流れになっている。中世と古代の二層の重要文化財が見つかった御成小学校の場合も、埋め戻して史跡を校庭にし、校舎を一部移動して建設することで決着した。

 

     今回のマンション計画の現地は鎌倉景観地区の旧市街地の指定があり、高さを15メートルに制限するとされている。しかし、東急不動産の計画は、高さを13.6メートルに抑えているので、これもクリアしている。

 

    残念ながら、このままでは大倉幕府の跡地に4階建てのマンションが建設される運びになる。

 

    かつて真鶴町では真鶴岬に計画が相次いだマンションを抑制するため、国の建築基準法よりも厳しい町独自の上乗せ条例を作り、建設を止めた経緯がある。真鶴町まちづくり条例がそれで、第10条に「美の原則(8つの原則)」を定め、これに合致しない建築物は建設できないとした。真鶴町の方向性を「美の基準」というユニークな手法で示したもので、自治体の条例でこうした基準を定めたのは全国初だった。第10条の「美の基準」には「調和」と「眺め」が入っており、自然と調和せず眺めを破壊する建築物は規制するとした。

 

    私が議員をしていた長野県軽井沢町も、リゾートマンションの乱立で景観が破壊されるのを防ぐため、国の法律よりも厳しい高さ制限を課した自然保護対策要綱を制定した。軽井沢町では新規のマンションは高さを3階までに条例で制限されている。

 

     鎌倉市も歴史的遺産を守るなら、国よりも厳しい上乗せ条例を定め、開発規制に乗り出すべきではなかろうか。そう強く思う。


    昨年3月に刊行された『日本遺産いざ鎌倉協議会』の小冊子には、「鎌倉市は、歴史的遺産と自然、文化とが調和したまちとして、2016年(平成28)年度にこの(日本遺産の)認定を受けました」との記載が巻頭にしるされている。しかしながら、いまの鎌倉市はどこを見ても開発ラッシュで、歴史的遺産と調和したまちづくりとは程遠いのが現実だ。この街をどうしたいのか、いまこそ為政者の見識が問われているとは言えないだろうか。

コメント
かつて古都保存法制定で全国に先んじた鎌倉だが、寺社は守っても市街地の開発には全く歯止めがかけられない現状に甘んじている。新たな規制条例が必要だ。しかし、その
ことを音頭取りする政治家が足りない。ブログの筆者には是非頑張ってもらいたい。
  • 鎌倉を憂える市民
  • 2018/04/17 1:22 AM


2017/12/15(鎌倉市議会)建設常任委員会 松中議員討論

日程第5 陳情第41号鎌倉幕府跡(桜道西側)のマンション建設認可を見直しして頂きたい旨の陳情書

(中継録画約4分半): https://youtu.be/ceaTzW-e3fo
  • 湘南一人オンブズマン
  • 2018/04/17 5:31 AM
計画地のすぐ近くにはかつて放送ジャーナリスト、ばばこういちさんの居宅があった。テレビ朝日の番組の名物コーナー『なっとくいかないコーナー』のキャスターとして名をはした人物だ。ばばさんが存命なら、今回の開発計画と鎌倉市のはがゆい対応に怒り狂ったに違いない。氏がいなくて残念だ。
  • 鎌倉有権者
  • 2018/04/17 7:02 AM
鎌倉市の課長補佐が女子高生のスカートの中を盗撮して現行犯逮捕された。市の職員が本来の仕事をきちんとしないでスカートの中を覗いて喜んでいるとは!! 鎌倉市も終わりだ!!
  • 怒れる鎌倉市民
  • 2018/04/19 7:50 AM
同感。怒り、憤怒、これしかない!! 鎌倉市長も鎌倉市職員も仕事をきちんとしないで、自分たちの給与アップに甘んじている。前回市議会で市長や議員、職員の昇給法案が承認された。賛成した市議もバカだ。古都の開発も規制できないのに、まさに給与泥棒だ。伊東市役所の玄関ロビーには、「市役所は『市』民に『役』にたつ仕事をする『所』です。その3文字を取り、書にして掲げます」との額がかかっている。鎌倉市役所職員に爪の垢を煎じて飲ませたい話だ。財務省の事務次官は女性記者へのセクハラで辞任した。鎌倉市では前に新人の女性職員2人にセクハラした次長がまだ辞任もしないで、職員として居座っている。市も終わりだね。
  • 憤怒する市民
  • 2018/04/19 8:08 AM
由比ヶ浜のショッピングモール計画も、鎌倉市には止める気がない。あそこも、中世の処刑場跡あるいは死体安置場所跡と聞いている。遺跡があるところを市は全く守ろうという姿勢がない。ひどいものだ。
  • 由比ヶ浜住民有志
  • 2018/04/19 8:36 PM
同感。旧鎌倉警察署跡もJRのホテルが建設される予定だ。先日発掘している現場を見たが、中世の武家屋敷跡のようなものが土の中から出ていた。今は埋め戻してしまった。発掘調査は斉藤建設が請け負っており、それなりに時間をかけているようだった。しかし、斉藤建設といえば、北鎌倉の洞門の開削工事を市から請け負い、いま市民から市長らが訴えられ係争中の会社。一方で開発に手を貸し、一方で遺跡を発掘しているとは、普通の感覚では理解しがたい。鎌倉には化け物が棲んでいるようだ。
  • 事情通
  • 2018/04/19 8:53 PM
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