北鎌倉隧道開削工事公金支出等差止請求控訴事件の判決下る

  • 2018.06.13 Wednesday
  • 20:52

    この6月13日(水曜日)午後1時15分に東京高裁824法廷で、北鎌倉隧道開削工事公金支出等差止請求控訴事件の判決が言い渡された。
    東京高裁民事第12部の杉原則彦裁判長の判決文(主文)は以下のとおり。


「主文
1   本件控訴を棄却する。
2   控訴費用は、控訴人らの負担とする」

 

     残念ながら、一審の横浜地裁に続いて、住民側の敗訴となった。以下高裁の判断を並べてみよう。

 

○最高裁は平成25年3月21日第一小法廷の判決で、「(1)契約が著しい合理性を欠き、看過し得ない瑕疵が存する時、(2)客観的にみて契約を解消することができる特殊な事情がある時……でない限り違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものとはいえず、支出命令が財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることはない」との判断を示している。
    今回の判決は、この最高裁判決に照らし、北鎌倉隧道開削工事の公金支出を違法なものかどうか判断した。詳しくみよう。


◎法令違反があったことに関して


○(1)急傾斜地の災害の防止に関する法律の神奈川県の同意、(2)宅地造成に関する工事の許可、(3)風致地区内行為の許可……これらの協議や同意、許可を工事開始後に得ていることについて控訴人らが違法と指摘した点については、高裁は次のように判断している。


○何らかの法令による規制に違反したものとは認められず、しかも、これらの手続きは、本件契約又は本件支出命令前に必ず行われなければならないというものではない。

 

○市は、本件開削工事に当たり、本件隧道の敷地所有者との間で使用賃貸契約又は賃貸借契約を締結していないが、道路管理者が道路の修繕を行うに当たり、当該土地所有者との間でこれらの契約を必ず事前に締結しなければならないというものではない。

 

○道路が良好な状態にない場合にこれを修繕するに当たってどのような修繕方法を採用するかの判断は、道路管理者の政策的又は技術的な裁量に委ねられているものというべきである。そうすると、道路管理者による道路の修繕方法の選択という判断は、他の法令による規制及び国土交通省令に従っていることを前提として、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものて認められる場合に限り、道路法42条1項により与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法となると解するのが相当である。(そのようなケースではない)

 

◎文化財価値を指摘されていた事実に関して

 

○(文化財の専門家などからの)本件各要望書等の記載から(隧道上の)尾根には保存を要する歴史的価値又は文化財的価値があると判断しなかったとしても、それはやむをえなかったというべきである。

 

○市の文化財専門委員会において本件隧道及びそれが所在する尾根の存置を求める専門家の意見がなかったばかりか、上記尾根が国の史跡として指定されるなどしていなかった以上、道路管理者である市が、本件隧道部分の通常有すべき安全性を確保するために、その修繕方法として本件開削工事を選択し、もって本件契約を締結するという判断に至ったことについては、その基礎とされた重要な事実に誤認があるとはいえず、したがって重要な事実の基礎を欠くとはいえず、また、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと又は判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らして妥当性を欠くともいえない。

 

○以上によれば、債務負担行為である本件契約は、本件隧道部分の市道の道路管理者である市の裁量権を逸脱し、又は濫用して締結されたものとは認められず、また、その内容が公序良俗に反するものともいえないから、私法上無効であるとはいえない。

 


○市は、道路管理者として、崩落の可能性が指摘されていた本件隧道部分の市道の安全性を確保する義務があった一方、本件契約締結に先立って、前記のとおり本件隧道及びそれが所在する尾根の歴史的価値又は文化財的価値について文化財専門委員会を開催して専門家の意見を踏まえるなどした上で本件開削工事を選択したものであり、改めて開催された文化財専門委員会で上記尾根が文化財的価値を有する場所であるとの結論が示されたのは、本件支出命令の後である。そうすると、結果として本件契約の締結は不相当であったとみる余地はあるものの、本件支出命令時点において、本件契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存在したとは認められない。


○よって、本件支出命令は適法である。
(判決文から引用)

 

   以上の理由から判決は控訴人らの主張を棄却した。何とも残念な結果である。傍聴した市民からは、とうてい納得できないとの声が上がった。

 

    前出のとおり最後の部分に、「契約の締結は不相当であったとみる余地はある」と判決文は書いており、文化財的価値を見落とした点に関して、市の瑕疵を一部認めた内容になっている。私はこの高裁の判断を生かさない手はないと考える。今後、最高裁に上告することにした。支出命令を下した時点で市が文化財的価値を知っていたか否かが、上告の争点になろう。

 

     最高裁がどのような判断を下すか注目したい。

コメント
残念です。文化財としての価値を工事前に市が知らなかったとは、とうてい思えません。考古学学会も要望書を市長に出していましたし、様々な文化人も意見を伝えていました。この点を高裁は検討したのでしょうか。
  • 鎌倉の文化財を守りたい市民
  • 2018/06/13 9:37 PM
判決は工事後とはいえ、本件尾根に文化財的価値があると文化財専門委員会が結論を下したと認定しており、市は今後破壊はできないと考えます。
  • 鎌倉市民
  • 2018/06/14 4:19 AM
そう思います。市長に工事費を返せとの判決は出なかったものの、不相当な部分がある、と認定しており、重い判断です。
  • 鎌倉を愛する人間
  • 2018/06/14 4:22 AM



この条例はとても面白いのではないでしょうか?

要望を無視している点は条例違反と言えますね。

○鎌倉市公正な職務の執行の確保等に関する条例
平成23年10月6日条例第12号
鎌倉市公正な職務の執行の確保等に関する条例をここに公布する。
鎌倉市公正な職務の執行の確保等に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、職員の法令等の遵守及び倫理の保持を図るとともに、要望等に対して職員が採るべき措置について必要な事項を定めることにより、公正な職務の執行の確保と市政の透明化を推進し、もって公務の適正な運営に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 職員 市長、副市長、教育長及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第2項に規定する一般職の職員をいう。
(2) 要望等 職員以外のものが職員に対して行う当該職員の職務に関する要望、提言、提案、相談、意見、苦情、依頼その他これらに類する行為をいう。
(3) 法令等 法律、法律に基づく命令(告示を含む。)並びに条例、規則及び規程をいう。
(職員の倫理原則)
第3条 職員は、法令等の遵守の重要性を認識するとともに、市民全体の奉仕者であることを自覚し、正当な理由なく、一部の者に対してのみ有利又は不利な取扱いをする等差別的な取扱いをしてはならない。
2 職員は、職務上の権限の行使に当たっては、職務上の地位を自らの私的な利益のために用いる等市民の疑惑や不信を招く行為をしてはならない。
3 職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを常に認識して行動するとともに、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げて職務を遂行しなければならない。
4 職員は、職務上知り得た情報を適正に管理することにより、公正な職務の執行を損なわないようにしなければならない。
(要望等への対応)
第4条 職員は、市政に関する要望等について、その重要性を十分に認識し、誠実かつ適正に対応しなければならない。

以下略

  • 湘南一人オンブズマン
  • 2018/06/14 7:46 AM
裁判所が法令違反もやむをえないと判決で言い切るとは! 残念でなりません。
  • 裁判所は法の砦では?
  • 2018/06/14 11:30 AM
5月18日に開催された「国指定史跡円覚寺境内保存管理計画運営協議会」の議事概要を見ると、「以前、文化庁は尾根の価値について異なる判断をしていた。その判断変更の理由を、文化庁が行うのが議論の最初である。文化庁はなぜ説明に来ないのか」「尾根について史跡指定されていないのに、現在、安全対策工事案から尾根を開削する案が除かれているのは、筋が通っていない。工事案の一つが最初から除外されてしまっているのはおかしい。開削案も含めて検討すべきである」といった意見が出され、円覚寺側から、以下の要望が伝えられたとある。「文化庁に対し、尾根に対する意見が変わったことの説明を求める。その要求に際しては、協議会で出された出席者の意見をそのまま伝えてもらいたい」「安全対策工事について、開削での実施を検討してもらいたい」お寺側からここまで露骨に、開削工事を望む声がいまだに出たことに驚く。判決は、工事後に出た見解と限定はしているものの、尾根の文化財的価値を認めた内容になっており、鎌倉市長は、これを無視できないと諌めている。今後開削工事はできないと、市は認識すべきだ。これをお寺に伝えるのが市長の任務だ。
  • お寺嫌い市民
  • 2018/06/14 9:46 PM
「鎌倉おやじのブログ」も全く同じ見解を書いています。それにしても、鎌倉の円覚寺ともあろうものが、文化財の破壊に積極的な立場をとるとは、驚きです。僧侶の堕落を痛感します。
  • ブログ読者
  • 2018/06/14 9:51 PM
メガソーラー建設で揺れる伊東市では、今年3月26日に「伊東市美しい景観等と太陽光発電設備設置事業との調和に関する条例」を交付、6月1日から施行した。この条例では、開発面積1000平方メートル又は発電容量50キロワット以上の太陽光発電施設は、市長が同意しないと定めている。市がやる気になれば、独自の条例で開発を規制できることを示したと言える。鎌倉市も見習うべきではないか。巣堀りのトンネルの景観を市は守ると条例で定めればよいのだ。市長のやる気次第だと言えまいか。
  • 景観を守りたい市民
  • 2018/06/20 7:45 PM
本日(6月25日)午後2時から横浜地裁502法廷で、私と北鎌倉在住の新谷直人さんが原告の「北鎌倉隧道安全対策検討業務委託費差止・弁済請求事件」の第2回口頭弁論が開かれました。この裁判は、松尾崇鎌倉市長に委託費4270万3200円の弁済を求める内容です。北鎌倉隧道をめぐっては、文化庁が尾根の文化財的価値をとなえ、市が工事を止めた経緯があります。尾根を残すには下の隧道も壊すわけにはいきません。にもかかわらず、日本トンネル技術協会に平成28年度29年度と二度にわたり安全対策工事の検討業務を委託したことは、予算の無駄遣い以外の何ものでもありません。この裁判は市長にその弁済を求め、今年3月1日に提訴したものです。当初は小磯副市長も被告に入れていましたが、「予算執行の権限はない」とのことなので、副市長に関しては被告から取り下げました。市側は予算は必要だと反論してきましたが、私たちは「予算の二重取りは明らかだ」と主張、次回までに市側がさらに反論書を書いて出すことになりました。次回口頭弁論は、9月5日午後3時から横浜地裁502法廷で開かれることになりました。こちらの裁判にもご注目下さい。
  • 岩田薫
  • 2018/06/25 6:03 PM
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