条例の形をなしていない(仮称)市民活動推進条例

  • 2016.11.29 Tuesday
  • 18:09

    鎌倉市はこの11月30日まで、新しい条例案に対して市民からパブリックコメントを募集した。仮称・市民活動推進条例がそれだ。条例案には異例の長いタイトルがついている。


「自分たちのまちなんだから自分たちでなんとかやってみようという想いを共有して行動するための条例」。何とも長いタイトルである。鎌倉市でも一番長い条例のタイトルになるという。


    驚くのはタイトルだけではない。この条例案には条文がないのである。


    以下に一部を引用しよう。

 


    自分たちのまちなんだから自分たちでなんとかやってみようという想いを共有して行動するための条例(素案)

 

 「鎌倉は、海と山の美しい自然環境とゆたかな歴史的遺産を有し、(中略)このまちの歴史、文化、風土が受け継がれ、また、新しい何かが生み出されるまちとして発展してきました。(中略)
    この伝統を受け継ぎ、わたしたち一人ひとりが、このまちをつくっていく主人公であることの自覚をもって行動していくための基本方針を定めるため、この条例を制定します。」


   この前文に続けて、1〜5までの次の文章が並んでいる。


「1   わたしたちは、鎌倉のまちをつくっていくのはわたしたち一人ひとりであるという想いを共有し、自覚し、自らができることを実行します。

2    わたしたちは(中略)人と地域で子どもを育て、共に学びあっていきます。

3   わたしたちは、世代、性別、立場等を越え、(中略)協力して鎌倉のまちをつくっていきます。

4   鎌倉市職員は、鎌倉で働き、鎌倉のまちのために関わる一員としての自覚を持ち、鎌倉のまちをつくっていくため積極的に関わります。

5  鎌倉市は、鎌倉を愛する一人ひとりがまちをつくっていく主人公として輝いて活動するための環境を整え、また、その活動を支援し、共により魅力的で住みやすい鎌倉のまちづくりを進めるため、1から5までの基本方針に沿った施策を策定し、実施し、よりこの条例の趣旨を反映したものにするため適宜見直すものとし、そのための指針を自分たちでやってみよう委員会条例(平成29年2月条例第○号)により定める自分たちでやってみよう委員会の意見を聴いて定めます。」

 


    何とも面白い条例素案である。念のため上級庁に聞いてみた。

○総務省行政課「地方自治体には条例の制定権が与えられています。しかし、条文のない条例など聞いたことがありません」


○神奈川県NPO協働推進課「目的だけで細則がない感じがします。県が市を指導するということはありませんが、法律の意味を履き違えている感じがしなくもありません」


    
   鎌倉市市民活動部地域のつながり推進課によれば、12月中にパブリックコメントに対する市側の回答をHP等に公表し、来年2月市議会に条例案を上程する予定という。その際に「仮称自分たちでやってみよう委員会」設置条例も提出し、市議会承認後、公募市民も交えた同委員会で、来年秋をめどに指針を定める予定という。

 

    ここで近隣市の市民活動推進条例を見てみたい。


○茅ヶ崎市市民活動推進条例
「第1条   この条例は、市民活動の推進に関する基本理念及び施策の基本的事項を定め、市民活動を推進するための必要な環境を整備することにより、市民活動の活性化を図り、もって協働による活力あふれる地域社会の実現に寄与することを目的とする」


○横須賀市市民活動推進条例
「第7条   市は、(中略)市職員に対する市民協働に関する啓発、研修等を実施して、職員一人ひとりによる市民協働の重要性の認識を深めるよう努める。」

 


 茅ヶ崎市も横須賀市も、条文に「市民との協働を推進するよう努める」と明記しているのだ。

 

○平塚市市民活動推進条例
「第1条   この条例は、市民活動の推進に関する基本理念及び施策の基本的事項を定め、(中略)市民の積極的な参画による真に魅力と活力あふれる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」


「第4条   市は、前条に定める基本理念(以下『基本理念』という。)に基づき、市民活動の推進に必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならない。
2   市は、施策の立案、実施及び評価の過程において、市民活動団体がその専門的知識、経験及び行動力を活かして参画できるための環境の整備並びに行政情報の積極的な提供に努めなければならない。」

 

    市の責務をきちんと条文に明記している。

 

○藤沢市市民活動推進条例
「第4条   市は、(中略)市民活動推進計画を策定し、市民活動を推進するための総合的な施策を講じ、市民活動が活発に行われるための環境の整備に努めるものとする。」

 

    藤沢市も、市の責務を条文に明記している。

 

    国が法律を策定し、国会に上程する際は、必ず内閣法制局のチェックを経る形になっている。法律に間違いがあってはならないからだ。この内閣法制局に相当するのが、鎌倉市の総務課法制担当だ。ここでは、各条例を定める際に、中味について法律的瑕疵がないかチェックしている。今回、前記の条例素案を発表しパブリックコメントを市民から募集するに際して、地域のつながり推進課ではこの総務課の法制担当に全く意見を聞いていないという。これも驚くことだ。

「これまでに、素案を見てほしいとの連絡はありません」(総務課法制担当)。

 

    前出の各市の条例に明らかなように、条例には市の責務が明記されている。憲法が内閣の暴走を止めるため、その義務を定め、国民に監視する権利があると明記していることは「立憲主義」として広く知られている。その意味で、市民活動推進条例で、市の責務を定めた条文は、市の暴走を止めるため、市の責務を定めて、市民との協働を義務づけた内容になっている、というふうに見れなくもない。鎌倉市のは条例の形をなしてないが、内容的にも、「市民のこころ構え」だけ書いて「市の責務」が書かれていない。これは明らかに片手落ちだと言えないだろうか。
    
 

 鎌倉市が手本にしたと言われる鯖江市には、市民活動によるまちづくり推進条例と市民主役条例と2つがある。前者の条例でさえ、第7条にちゃんと市の役割を記した条文が埋め込まれているのだ。市の責務を書いた条文のない鎌倉市のような条例は異例と言える。また、後者の条例も、目的だけ記載したものではなく、ちゃんと条文がある。

 

    鎌倉市の条例素案には、さらに「情報公開の必要性」「市民活動推進の予算付け」といった条文も欠落している。推進条例には必要不可欠のもののはずだ。これも指針で定めるというのだろうか。聞けば、指針の策定には市議会の了承はいらないという。議会軽視もはなはだしいと言えまいか。

 

    また、今回の素案はただ単に検討会の意見を並べただけで、市民並びに行政が何をやるべきか、全く明記されていないといった声もある。

 

松尾市長が、今回の条例を他市に誇りたい気持ちはわからないではない。しかし、墓穴を掘ることになるのではないか、そんな声があることを申し述べておきたい。

コメント
確かに条例の形をなしていない。ブログの意見に賛同します。
  • GREENET
  • 2016/11/29 9:23 PM
市長の責任を追及すべし。
  • いい鎌倉を目指す会
  • 2016/11/29 9:25 PM
何だ、この条例は。条文もないとは、あきれる。
  • 怒る鎌倉市民n
  • 2016/11/29 9:28 PM
市の法制担当に意見を聞いていないと驚き。
  • 元自治体議員n
  • 2016/11/30 7:26 AM
こんな条例案を出すとは辞職ものだ。
  • 辞めろ松尾連合
  • 2016/11/30 7:28 AM
これはひどい。全国の自治体でも一番程度の低い条例素案だ。
  • 鎌倉オンブズマン
  • 2016/11/30 3:38 PM
市民活動推進条例は、市、市民、事業者・・・の三者の責務を定めたもののはず。それが素案には全く欠落している。
  • 鎌倉有権者の会
  • 2016/11/30 3:43 PM
市の法例担当に意見を聞いていないのはとても問題。内部の連携がうまくいってないのではないか。
  • 鎌倉法例研究会
  • 2016/12/06 8:26 AM
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